第壱座「翁之舞」
翁が宮司より大幣を受け鈴を持ち平舞の囃子で、天下泰平、国土安穏、五穀豊穣を寿ぎ一人で舞う。

第弐座「猿田彦之舞」
猿田彦之命(道祖神、庚申、船魂神…旅の安全を守る神)
供人(従者の意。神楽では抵悟(もどき)、道化の名前)

猿田彦が剣と鈴を持ち四方祓め(十文字、筋交)を演じながら
国家繁栄を願い早舞の囃子で舞う。
猿田彦が舞終わると供人が刀と鈴を手に、
繁栄を祝い道化囃子で猿田彦の所作をまねながら舞う。

第参座「天宇豆女之舞」
猿田彦之命(道祖神、庚申、船魂神…旅の安全を守る神)
供人(従者の意。神楽では抵悟(もどき)、道化の名前)

猿田彦が剣と鈴を持ち四方祓め(十文字、筋交)を演じながら
国家繁栄を願い早舞の囃子で舞う。
猿田彦が舞終わると供人が刀と鈴を手に、
繁栄を祝い道化囃子で猿田彦の所作をまねながら舞う。

第四座「剣玉之舞」
金山彦之命(金の神、金物の神)
天狐(稲荷大神。稲荷大神の神助により名刀を打った)
天之目一筒命(あめのまひとつのみこと)=石凝姥命(鍛冶祖神。鏡を鋳、剣、鐸を作りし神)

この舞は岩戸開伎に用いる剣を作る舞である。
金山彦が金槌を持って出で平舞の囃子で(筋交)を舞い
天狐も金槌を持って出(筋交)を舞う。
次に天之目一筒命は道化囃子で舞ながら剣を打つ金敷を運び据える。
金山彦之命、天狐、天之目一筒命が力を合わせて剣を作り上げる舞である。

第五座「岩戸開伎之舞」
天照大神
 天之児屋之命(あめのこやねのみこと)(文学、言葉の神)
 天之太玉之命(あめのふとだまのみこと)(神事の神、歌曲の神)
 天之豆女之命(あめのうづめのみこと)(神楽の神、芸能の神)
 天之手力雄命(あめのたじからおのみこと)(力の神、相撲の神)

 岩戸開伎の神楽は「古事記」「日本書紀」の神話にある「天之岩戸」を神楽にしたものである。 

 天照大神の弟、須佐之男命(すさのうおのみこと)は所構わず大暴れし世の中に迷惑をかける。

 天照大神が忌服屋(いみはたや)にて神に献(たてまつ)る御衣(みそ)を織らせていたとき、須佐之男命が服屋(はたや)の頂(むね)に穴をあけ、天斑馬(あめのふちこま)の皮を剥ぎ陥れたので天の衣織女(みそおりめ)は仰天し梭(ひ)で陰上(ほと)を突いて死んでしまう有様であった。

 天照大神は嫌って、天の岩戸に入ってしまわれたので高天(たかま)の原は皆暗く、豊葦(とよあし)原の中っ国もことごとく暗くなり、多くの神々の騒ぐ声は群がる蝿のようであった。

 あらゆる妖(わざわい)が全てに起こったので困り果てた八百万の神々が、天安之(あめのやすの)河原に集まり、高御産巣日(たかみむすび)の神の子、思金(おもいかね)之命に考えさせた。

 常世の長鳴き鳥を集めて鳴かせ、天安之河の河上に有る天之堅石(かたしほ)を取り、天之金山の鉄(まがね)を掘り、鍛冶屋の天津麻羅(あまつまら)を尋ねる。石斯許理度売之命(いしこりどめのみこと)に鏡を作らせ天之児屋之命、天之太玉之命を呼んで、天之香具山(かぐやま)に住む牡鹿の肩の骨を抜いて焼き占う。

 天之香具山の茂った榊を根掘(ねこじ)して上枝に玉を著け、中枝には鏡を懸け、下枝に白和幣青和弊(しろにきてあおにきて)(麻を晒した物、布にした物)を取り付けた。天之太玉之命が大御幣(おおみそぐら)を持ち、天之児屋之命に祝詞を奏上させ、天之手力雄命を岩屋の陰に隠れさせた。

 天之豆女之命が神懸かりし舞い、神々が囃したてているので、天照大神は怪しく思い天之岩戸を細めに開き内より仰せられるには「私が隠れ豊葦原中っ国は暗いのに、天之豆女之命はなぜ笑いながら唄い踊り八百万の神々も笑っているのか」との仰せに「天照大神様より貴い神様がいらっしゃいますので楽しく遊んでおります」と申しているうちに天之児屋之命、天之太玉之命が八咫(やたの)鏡をお見せしたので天照大神が岩屋より少し出たところを隠れていた、天之手力雄命が天照大神の御手を取り引き出し奉った。

 天之太玉之命が尻久米(しりくめ)縄を引き渡し、天照大神に「之より内へは決して還りますな」と申し上げたので高天之原と豊葦原の中っ国も自然と明るくなった。

 八百万の神々が相議り、須佐之男命に罪を償わせ髭と手足の爪を切り逐い払ったという神話をもとに構成されている。

 天之児屋之命、天之太玉之命が幣束を持って平舞囃子で(筋交)を舞う。

 天之豆女之命も小竹の葉を束ねた弊を持って平舞囃子で(筋交)を舞う。

 天之豆女之命は扇を開き天之手力雄命を招く。天之手力雄命が岩屋を開け天照大神を引き出し奉り天之太玉之命が注連縄を引き渡す。

 天照大神を中心に奉り四人の神々が平舞の囃子で厳かに舞う。

 天照大神は鏡を持ち天之豆女之命を注目し、同じ方向にまわる。

 天之児屋之命、天之太玉之命が天照大神を還し奉る。

 天之手力雄命、天之豆女之命は夫婦舞で祝う。

 最後に天之手力雄命は剣を持ち早舞囃子で勇壮に舞う。


第六座「巨蛇退治」
稲田姫命(いなだひめのみこと)=櫛名田比売命(くしなだひめのみこと)(愛の神)
足無槌之命(あしなづちのみこと)(稲田姫命の父)
須佐之男命(河川、航海、山林、農業、多くのことを守り導く神)

巨蛇須佐之男命は粗野な性格から「天の岩戸」の事件を起こしたため根の国へ追放されたが、
出雲の国で夫は足無槌之命、妻は手名椎命(てなづちのみこと)という夫婦が娘、
稲田姫命を囲んで泣いているところへ通りかかる。

理由を尋ねると私たちには娘が八人おりましたが、
八俣の巨蛇が毎年食べてしまいすでに七人の娘を奪われた。
今年もその時期ですのでどうにもならず泣いておりますと言う。

八俣の巨蛇はどのような姿かと問わば、目は真っ赤で胴は一つ、
頭が八つで尾も八つ背には苔や杉の類が生えているとのこと、
須佐之男命は足無槌之命に巨蛇を退治できたなら稲田姫命を妻に欲しいと伝える。
あなたは誰かと尋ねられ私は須佐之男命、天照大神の弟で今、天から下って来たところですと答えた。
見事退治できたならあなたの思いを叶えましょうと。

そこで巨蛇退治をするため八つの入り口を作り、
八個の瓶に酒をいっぱいに注ぎ待っていると、八俣の巨蛇が現れ酒を飲み干してしまう。
酔って寝たところを御佩之十挙(みかしのとつかのけん)の剣で切って退治し、
巨蛇の尾から天叢雲之剣(あめのむらくものつるぎ)を取り出し、
天照大神に献上し稲田姫命と結ばれたという神話を神楽にしたものである。


第七座「鬼人退治」
玉取姫命
大和武之命(やまとたけるのみこと)(火防の神、武勇神)
鬼人

鬼人退治の舞は大和武之命の強さを表現した舞である。
 
玉取姫が金の玉を持って(平舞の囃子で)舞っている。
 
鬼人が現れ玉取姫の玉をいろいろ工夫して奪ってしまう。

奪った玉を玩んでいると大和武之命が取り返してしまう。

(取り返しては奪う所作を三度繰り返す)鬼人は何としても奪えなくなってしまったので、体が見えなくなる隠れ蓑を着て再び奪ってしまう。

大和武之命は取り戻そうとするが隠れ蓑を着ていて見えないので鬼人の子を連れてきてその子に剣を向ける。

慌てた鬼人は玉を返す。大切な金の玉が無事戻ったのを喜び大和武之命と玉取姫が(平舞の囃子)で夫婦舞を舞う。
 
その後、大和武之命は剣を手に(早舞の囃子)で一人猛々しく舞う。

鬼人も玉を奪った事を反省し、我が子を抱きながら(道化囃子)で舞う。

第八座「種蒔之舞」
受持命(うけもちのみこと)(農家祖神、五穀神)
天狐(稲荷大神の助神)
毛止気(道化)
 
種蒔之舞は五穀豊穣を祈願しそれを祝う舞である。

受持命が五穀豊穣を願い幣束を持って(筋交)を舞う。

天狐は毛止気を連れて登場し、鍬を持ち稲作りや農作業の安全を願い舞う。
 
田を耕し籾を蒔きやがて収穫を終え、
神に御供えする餅搗きを天狐が毛止気を使いながら滑稽に演じる。

やがて鏡餅も搗き上がり神に御供えし収穫の喜びと幸福を感謝する舞である。

第九座「恵比寿之舞」
恵比寿之神=事代主之命(ことしろぬしのみこと)(豊漁神、農業神)
蛭子(ひるこ)
岡崎=おかし(平安朝以後口先の芸で人を笑わせる役)脇役
藪医者
河童
 
天照大神が豊葦原(とよあしはら)の水穂国は我が子、
天忍穂耳命(あまのおしほのみこと)が治めるべき国と申される。
大勢の神々の中から選ばれた、建御雷命(たけみかずちのみこと)が大国主命に国を譲るようにとの、
天照大神の仰せで使いに来ましたと伝えあなたの心はいかがですかと尋ねる。

我が子、事代主之命に政治(まつりごと)は一任してあるので
、事代主之命が御返事申し上げますが、
只今漁に美大之崎(みおのさき)へ行き還っていないので、
天鳥船(あめのとりふね)之神を迎えに遣わしましたとのこと。

事代主之命が戻り尋ねると「この国は謹んで、天之神之御子に献上いたします」と言い
船を踏み傾けて逆さまに手を打ち青々とした神籬(ひもろぎ)(神の依代(よりしろ))を作り
その中に御鎮まりになったとの神話より、事代主之命が漁をしているところを舞にしたものである。

恵比寿之神が釣り竿を持ち平舞の囃子で(筋交)を舞う。

道化囃子で岡崎と蛭子が出て釣り糸を垂らすが魚は釣れず河童を釣り上げてしまう。

大騒ぎの末河童を取り押さえるが岡崎が河童に尻を噛まれてしまう。

あわてて医者を呼んで来るが藪医者のため思うような治療ができず、騒ぎの末やっと治す。

岡崎と蛭子は漁をあきらめ釣り竿を恵比寿之神に返す。

やがて恵比寿之神が大きな鯛を釣り上げる。

豊漁を祝っためでたい舞である。

第拾壱座「釜湯の舞」
白瀧姫(白瀧神社の由来参照)
山田之命

白瀧姫と山田之命が大釜の湯を榊に付け参詣者に振りかけ
家内安全、身体健康、事業繁栄を願う。
その、大釜の湯を用いて繭より糸を引き、染色し糸枠に巻き上げる。
染めた糸にて丁寧に、仁田山紬を織り上げ、神前に奉納する。

三ッ拍子で白瀧姫が登場し、神前に参拝後、平舞の囃子で一人舞を舞い、四方を清め、脇に控える。 
山田之命も三ッ拍子で出でて、参拝し一人舞で四方を清める。
白瀧姫と二人で繭から糸を引き、染め、糸繰りをする。
一連の作業で出来た糸で仁田山紬を織り上げ神前に奉納後、平舞の囃子で喜びの夫婦舞を舞う。

※白瀧神社に語り継がれる機(はた)神(がみ)伝説を神楽にしたものであり、
本来の釜湯の舞が伝承されなかったため創作したものである。

平成二十四年八月大祭


第拾弐座「上棟式」
八意思兼神(やごころおもいかねのかみ)(知恵の神、建前で行う手斧初めの祭神)
抵悟(もどき)(従者の意、道化)

この舞は棟上げを喜び工事の安全と建物の堅固長久を祈念する舞である。

八意思兼神が最初に登場し神前を拝み工事の安全を願い一人厳かに舞う。
抵悟二人は道具箱を担いで登場し神前を拝んだ後、八意思兼神に挨拶に行き作業の指示を仰ぐ。
意思兼神は材木を運んで来るよう指図する。
抵悟は材木を運び込み台(馬)に載せる。
八意思兼神が材木をお祓いし指金で計り 抵悟に墨付けをさせる。
抵悟は ふざけた所作で墨付けをする。
手斧の使い方を教えるも真面目に作業せず喧嘩になってしまうが八意思兼神が仲裁に入り仲直りをさせ作業を続けさせる。
仕上がった木材を鋸で切り柱や梁に加工する。
柱や梁を三人で組み上げ御幣を付け神前に建て上棟式の準備が整う。
抵悟が徳利と盃を用意し手打ちの後祝宴を始める。
供物を撒き観客と共に上棟を祝う。
八意思兼神が先に帰り 抵悟は道具箱を担いで舞ながら退場する。

※上棟式は長らく途絶えていたのを平成二十年八月に復活したものである